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モータウンの余白から - 湯浅学

第1回

ほんとうにそういう人だったんですか? あんた演出もほどほどにしろよ。また妄想だろどうせ。客観性に乏しい内容のない本。

などという御意見御感想をいただいた『モータウン・ハンドブック』も刊行からもう2年がたちました。

一部でご指摘いただいたように映画『永遠のモータウン』の公開の合わせて猛ダッシュで作った本です。だから雑、といいたいわけではありません。そういう〆切がなければ作れなかっただろう、と思います。客観性に乏しい、という人にとっての主観というのはどこをいうのか、その人にぜひ客観的な線引きをしていただきたい。その点において批判を受けても、ああそうですか、としか返答できない。する気もない。客観性だけで文章は書けない。

なぜモータウンというレコード会社はああだったのか、ということを想像する材料を集めて束ねてみよう、と思ったわけですが、それにしては抜けている資料が多くないか? という人もいるでしょう。そのとうりです。チャート・アクションに関する表がないし、通引をたどれる年表もない。主要アーティストに関する紹介ページをやめて、年表とレコード・ガイドだけでいい、という人もいるでしょう。しかしそれだけでは、なぜベリー・ゴーディーがこの会社を立ち上げたのか、なぜマーヴィン・ゲイがああだったのか、そういうことが伝わりにくい。それにこの本は自費出版ではないので予算には限りがある。ファンジンではないので内容にも区切りが必要である。そのような理由からこうなったわけです。

本が出来たあともいずれ改訂版を出したいと思っているのでカタログ拡充用と、せっせとアルバムをできるだけオリジナル盤で購入しています。今は別な仕事にお金がかかり予算が捻出できないため休止していますが、いずれ再開しようと思っています。海外ではモータウン全シングルABをCDに収めるシリーズも開始され、未発表音源もあれこれ陽の目を見るようになりました。モータウンの音源は膨大にある。その代表的なほんのわずかなヒット曲だけが伝え聴かれていくというのは人類にとって大きな損失であります。

ゴーディ大将のアクの強さや信念といったものを類推するならむしろたいしてヒットしなかった曲や、ロックウェルのようなタレントや『ウィズ』のような映画について考察するほうが有効なことも多々ある。それだけで良いなどというつもりはまったくないですが、世間的にダメなもの、とされているもののほうが、作った人たちの本質的な、欲望、動機、立場、周囲との関係、経済状況や恋愛のありよう、などがポロリと表出していがちだったりすることが多い。穴ねらいということではなく、人間スキのある状態のほうがついうっかり奥にしまい込んでいた言葉を吐いてしまうようなことがあるものだ、といいたいだけです。

モータウンに関してきっと世界中であれこれいう人がいるのだろうし、コレクターもたんまりいるだろう。ジェームス・ジェマーソンが弾いていない曲に関する研究というのも続いている。本当はどうなのよ? という問いは必要ではあるが、あんたはどう聴くのよ? という呼びかけには応えたいし、投げかけたい。

米オリジナル盤、米リイシュー盤、英国盤、英国独自編集盤、日本盤、日本リイシュー盤、シングル盤、それにCD、と聴き較べていくと切りがなく、しかも60年代のアルバムはモノラールとステレオの2種があることが多いので、サウンドに関してもあまりイージーな断定はできない。較べるだけでも大仕事だし、オーディオ・システムそのものを改めたくなることもちょくちょくある。特に60年代前半作品は、音質にムラが多く、それが魅力でもあるので、ハマるとたいへんなことになる。ハマリかけて少々後悔しているのだった。

2006年04月04日 17:50| 個別ページ

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