パリ発!教えたくない逸品 - 粟野真理子
第3回 幻の香水 ル・ジャルダン・ルトゥルヴェ
「実は幻の名香があるんですよ。とってもいい香りで、ヨーロッパでは特定の場所でしか入手できない…」
こんな言葉を聞くと、すぐにその香りを嗅いでみたくなる。
さっそく発売元を訪ねてみた。
香水ブランド名は、「ル・ジャルダン・ルトゥルヴェ」(Le Jardin Retrouve)。
まず、ネ−ミングがいい。
思い出の庭、再会の庭という意味で、ジャルダン(庭)と聞くだけで、なにかなつかしさがこみ上げてくる。
「ル・ジャルダン・ルトゥルヴェ」は、1976年に、調香師ユリ・ギュザッツが設立したもので、彼は‘40年代〜’50年代に、バルマンやバレンシアガ、ニナ・リッチなど一流オートクチュールメゾンの香水を多数手がけてきた香水界の重要人物。
職人気質だったユリ・ギュザッツは、世界中から取り寄せた厳選された自然の香料を使用して、伝統的な技法と天才的な嗅覚で、シンプルでナチュラルな香水を調香し、彼自身のブランドを打ち立てたそうだ。
ブランドが創設されてから、モード界の人々を魅了してきたが、その後、商業ペースにはのらず、幻の香りとなり、ごく一部でしか入手できなくなってしまったという。
やがて、ユリ・ギュザッツ没後、2005年にあるバイヤーに見い出され、「ル・ジャルダン・ルトゥルヴェ」は、ふたたび脚光を浴びつつある。
こんなブランドストーリーを聞きながら、いくつもの香りを嗅いでみた。
そのなかでも、私の香りの記憶に残ったのは、「ローズ・テ」(Rose The)。
これもネーミングが好きだ。英語だとローズ・ティー。
「ローズ・テ」の香りは、とてもなつかしい、バラの自然な香りがたちのぼる。ほのかに甘美で、自分のなかに潜む官能の扉をあけてくれるような、そんな色香も感じられる。
それは油断すると、単に「バラの香り」の一言で片づけられてしまうほど単純な香りのようでもあるが、いえいえこれはなかなか奥が深い。
あとで知ったことだが、この香水は1952年に、パリのオペラ座でバレエを上演する際に、毎夜この香水を振りまいたという。
ユリ・ギュザッツは、この香水を「バラの幻影」という名で、バレエを香りで彩ったそうだ。
なんて素敵な試み。
私はこんなクリエーションが大好きだ。
いまは化学的な香りが全盛らしいが、こんな手作りの自然な香りに出合うと、自分が自然体になれるような気がしてくる。
しばらく、この「ローズ・テ」と付き合ってみたい。
2006年08月29日 01:34| 個別ページ
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