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第9回 ヨーロッパの路地裏を歩こう その3 フィレンツェ

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異邦人にとって異国の街で“暮らすように旅する”のは容易なことではない。
ましてや、束の間の訪問であればなおさらだ。
しかし、その都市の扉を開く“鍵”が見つかれば意外とスムーズに暮らしに溶け込んでいけるようだ。
もちろん、その都市の扉は旅人の個性によって異なり、したがって、その鍵も異なることだろう。

さて、多くの街で共通する合い鍵もある。
それは、市場と食堂である。
私は、どの街でも最初に訪れたときは、まず市場に飛び込む。
食材や物価を知るということも目的だが人々の息吹に触れ、生活のリズムを体感するということの方が大きい。
もちろん、ワインやパン、チーズなどを買い込んでピクニック・ランチを調達することもある。
また、フィレンツェの中央市場Nerboneサンタンブロージョ市場 のRoccoなどの場内食堂で安上がりに食事を済ませることもできる。
好物のミートボール(Polpettino)の注文がちゃんと通じたときはほっとすると同時に、街に再び迎え入れられたとの喜びがこみ上げてくる。

フィレンツェの街を身近に感じることができるようになった鍵はタベルナコロ(Tabernacolo)とカーサ・トッレ(Casa Torre)という旧市街のそこここに見かけられるモニュメントの存在に気づいたことだった。

タベルナコロは、街角の建物の壁にしつらえられた聖母や聖人を描いた美しいほこらで聖龕とも訳される。
色鮮やかなフレスコや彫刻、彩色陶器などで象られた聖母子などの像が置かれており、周囲では可憐な天使たちが舞っている。

タベルナコロがフィレンツェの街で盛んに作られるようになった理由はふたつある。
ひとつは、キリスト教の異端審問だ。
庶民は異端に組みしていない証として辻々にマリアの絵を掲げるようになった。
もうひとつの理由は、14世紀のペスト大流行である。
人々は、感染のおそれがある教会を避け、聖母マリアが病を癒すという信仰もあって街角のタベルナコロで祈りを捧げるようになった。
やがて、タベルナコロの前で礼拝も行われるようになり、祭壇状の台を設け、礼拝所としての機能を持つものも現れた。

Brunelleschi.jpgもうひとつの鍵は塔状住宅とも訳されているカーサ・トッレだ。
12世紀に入るとフィレンツェの貴族たちは威信を示すためと抗争が起きたときに軍事拠点とするために競って高い塔を建て始めた。
当時、塔の高さは70メートル以上あり、いざとなれば、塔の内側に巡らせてあった木の階段を外して上部に籠城することもできた。
今でも塔に残る角材をはめ込む穴は抗争時に回廊を巡らし攻撃拠点とした跡だそうだ。

13世紀半ばには抗争も収まり、市民秩序が回復してくると高くて厳めしい塔は存在価値を失った。
そこで、平和の到来を告げる意味合いもあって、建物の高さを29メートル以下に制限する法令が出された。
塔は、城塞の要としての意味を失い、近隣の建物の高さと同じに切りつめられ、多くは建物と溶け合っていき、塔としてよりも住居としての機能が重視されるようになった。
19世紀にロマン主義の時代を迎えるとノスタルジーを掻き立てるックなカーサ・トッレの多くが修復され、中には新たに彫刻やテラコッタ、壁画などで美しく飾られたものも現れた。

タベルナコロとカーサ・トッレの歴史的背景や様式について少し勉強すると、見知らぬ街角にも親しみを感じるようになり、まるで自分のホームタウンのようにさえ思えてきた。
エリザベッタ通りにあるホテル・ブルネッレスキや、ヴェッキオ橋の手前にあり屋上のテラスバーから古都の夕暮れを見下ろせるホテル・コンティネンタル、3つ星のホテル・トッレ・グェルファなどカーサ・トッレを利用したホテルも数多く残っている。

今度フィレンツェを訪れられたら中世の佇まいが残るトッレのホテルに泊まり、街に数百と残るタベルナコロを巡り歩いてはいかがだろうか。

参考サイト:
イタリアの素晴しき古都フィレンツェへようこそ!
http://www.florenceitaly.net/nihongo/index.html 
Viva!トスカーナ-ダヴィド流簡単レシピと美味しい生活
http://www.florenceitaly.net/toshiaki/toscana.html
フィレンツェ旅の雑学ノート」リンク集
http://www.geocities.jp/euro747/firenzeurl.html

2006年10月16日 15:36| 個別ページ

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